観測地を与えてロケットの仰角リストを求める。石鎚山、剣山からの見え方も。

2020-02-23

GoogleEarth Mathematica Wolfram ロケット 種子島

t f B! P L

四国の剣山山頂から種子島方向を望むGoogleEarthシミュレーション。H2,H3ロケットは次郎笈への登山道と続く形で昇ってくるはず(紫の曲線)。右側は内之浦から昇るイプシロンの軌道例。


以前の投稿


「遠隔地からロケット打ち上げを見る準備
https://apnea3.blogspot.com/2020/03/howtowatchrocketlaunch.html

では射点から何km上昇すれば地平線より上に出てくるかを
観測地の標高ゼロの場合
観測地の標高を与えた場合
について考えた。

また、打ち上げごとに異なる高度と時刻の関係も考えた。

実際には観測地からみた仰角も欲しくなると思われるので追加で計算してみた。

前回と同じように無料の
https://www.wolframcloud.com/
を使って特定の観測場所から見たロケットの仰角を計算してみる。



Wolfram言語については
https://www.wolfram.com/language/elementary-introduction/2nd-ed/
がおすすめ。他にもオンラインで大量のリソースあり。

WolframCloud画面の右側で関数その他関連情報を常に参照でき、実例をクリックするだけでクリップボードに入れて利用できる。


まず図を描く。(こんな機能ができていたことに驚き)定性的な拘束条件を記述するだけで図が出力されるのがすごいが、ここでは具体的な数値を与えて描いた。

GeometricScene[{
o -> {0, 0},
a0 -> {0,6},
b -> {-6Tan[30Pi/180],6},
b0 -> {-6Sin[30Pi/180],6Cos[30Pi/180]},
c -> {6, 6},
c0 -> {6/Sqrt[2], 6/Sqrt[2]},
d -> {9,9},
e -> {9,6}
},
{
Triangle[{b,o,a0}],
Triangle[{b,o,a0}],
Triangle[{b,o,d}],
Triangle[{d,b,e}],
CircleThrough[{b0,a0,c0}]
}
]//RandomInstance



ここで点の記号割当は以下の通り

地球中心           o
観測地            b
観測地の地表への投影     b0
ロケット位置         d
ロケット位置の地表への投影  c0
観測地からみて地平線上に見え始めるロケットの位置 c
と、その時の接点位置     a0
b-a0-cの延長線上にdから下ろした垂線の足 e


地球半径 R=ob0=oa0=oc0
観測地標高 h=bb0
不可視高さ H=cc0
可視高さ  DH=cd
水平補助線長さ x=ce
垂直補助線長さ y=de
観測地とa0の距離 L1=a0b
ロケットとa0の距離 L2=a0c
観測地とロケットとの距離 L=L1+L2
ロケットの仰角 ∠dbe




例:久万高原天体観測館の場合

遠隔地から昼間のH2AF41打ち上げを捉えることに成功したケースがTwitterで紹介されていた。すばらしい。


GoogleEarthでみた空き地の標高はおよそ600m
射場と空き地を結んだ線分を引くとその長さは408km
前回同様に計算する。

In[]:=

h=0.6;
R=6378;
L=408;
NSolve[{
L1+L2==L,
(h+R)^2==L1^2+R^2,
(H+R)^2==L2^2+R^2,
L1>0,L2>0,H>0
}]

Out[]= {{L1->87.4869,L2->320.513,H->8.04828}}

つまり手前に山がなく地平線・水平線が見渡せる標高600mの場所だったと仮定したら

ロケットが高度8kmまで登ったところから見え始めるということ。

定数を代入しておく

In[]:=
H=8.04828;L2=320.513;L1=87.4869;

地表から測ったロケット高度のリストを作る
In[]:= GenchiTakasaList=(Range[8])*5+20
Out[]= {25,30,35,40,45,50,55,60}

観測地から地平線上に見える高さリストをDHとすると
In[]:= DH=GenchiTakasaList-H
Out[]= {16.9517,21.9517,26.9517,31.9517,36.9517,41.9517,46.9517,51.9517}

補助線長さy,x
In[]:= y=DH Cos[ArcTan[AC/R]]//N
Out[]= {16.9304,21.9241,26.9178,31.9115,36.9052,41.8988,46.8925,51.8862}

補助線長さx
In[]:= x=DH Sin[ArcTan[AC/R]]//N
Out[]= {0.850799,1.10175,1.3527,1.60364,1.85459,2.10554,2.35649,2.60743}

仰角リストは
In[]:= elevation=ArcTan[y/(L+x)]/Pi*180
Out[]= {2.37124,3.06759,3.76218,4.45481,5.14529,5.83344,6.51907,7.20199}


一気に計算するときは
R=6378;H=8.04828;L2=320.513;L1=87.4869;L=L1+L2;
GenchiTakasaList=(Range[8])*5+20;
DH=GenchiTakasaList-H;
y=DH Cos[ArcTan[L2/R]];
x=DH Sin[ArcTan[L2/R]];
elevation=Round[ArcTan[y/(L+x)]/Pi*180,0.1];
Prepend[Transpose[{GenchiTakasaList,elevation}],{"高度km","仰角Deg"}]//Grid


これを貼り付けてShift+Enterキーだけで下の表が返ってくる。



「式」//「関数名」という表記法は//より左側の式を評価した結果に関数「関数名」を適用するという意味
関数名[式]と同じ意味。カッコが不要だし簡潔なのですっきりする。


観測地:久万高原天体観測館横空き地中央の座標をGoogleEarthから読み取ると
33度40.553' 132度56.323'

WolframCloudは全地球の標高データを知っているので
In[]:= GeoElevationData[GeoPosition[{
"33\[Degree] 40.553'","132\[Degree] 56.323'"
}]]
Out[]= 1988.19ft

ftは馴染みがないので変換すると
In[]:= UnitConvert[Quantity[1988.19,"Feet"],"Meters"]
Out[]=
606.m

と出た。GoogleEarthの画面下にも標高600mと出ているので標高は600mとしておく。



以下結論的なもの

標高 :600m
種子島射点との距離:408km
をもとに高度ごとの仰角を計算する。
これとは別にH2AF35の打ち上げ経過秒数と標高の関係を以前出していたので併記してみる。
高度35kmあたりから山の向こうに見え始め写真の状態まで10秒間程度と推測される。

ただしH2AF41とはパラメータが異なると思われるので経過秒数はあくまでも参考である。
H2AF26(はやぶさ2)の場合SRB燃焼終了時1.6km/sとこれより遅めだった。
情報収集衛星ということで打ち上げ計画書は公開されていないが
H2AF41の場合はSRBは2本なのでこの点からもH2AF35とは値が異なってくるはず。

高度km  仰角Deg 経過秒(参考)
25    2.37124  75
30    3.06759  81
35    3.76218  86
40    4.45481  91
45    5.14529  95
50    5.83344  99
55    6.51907  103
60    7.20199  106

久万高原天体観測館で仰角5度位にいるのが撮影できたとのことなので確認。

手前の山が近いため撮影場所をずらすとかなり見え方が変わってくる。

天体観測館前の3台駐車場の真ん中から


周辺の配置を改めて確認。グランドCは標高が低いので不利、機材を持って移動するのもだるいのでおそらく却下。V字の峠の右寄りから出現しているので地図上でAが一番有利。舗装で三脚も安定するので少人数で実施するならここで決まり。A,B,Cから200mmで見たところを以下に描画してみる。

グラウンド中央 (観測館より25m低い) 36~37kmから見え始め

 観測館と同じ高さ 観測館南側の庭? 31kmから見え始め

観測館と同じ高さ 駐車場3台分の真ん中 30kmから見え始め
種子島からの打ち上げについてはここが一番有利


ちなみに、おすすめなのは石鎚スカイライン岩黒レストハウス下の駐車場あたり(33.753721, 133.146775)。高度20kmあたりから見え始める。
天候・樹木・道路状況が許せばの話。

HFOV=90deg


HFOV=35deg


HFOV=20deg(100mm相当)


HFOV=10deg (200mm相当)

理想を言えば天狗岳頂上。一番下高度10kmの目盛よりも下から見え始め。高度が上がるにつれてどんどん加速する様子も観察できるかも。迫力あるかぶりつきの見学とは違った面白さがあるはず。


四国なら剣山も狙い目。美しい次郎笈の登山道からそのまま続くかのようにロケットが昇ってくるなんて絵になりそう。イプシロンの南打ちもここから撮ってみたいもの。第三段モータの燃焼が見えれば地球の丸さを実感できるかもしれない。一度登ったことがあるが山頂直下までロープウェイで上がれるし、視界を遮るものはまったくない素晴らしい場所だった。石鎚山については経験がないので視界や植生の状況は不明。



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