金甲山からあべのハルカスの光が写せる件(固定ページ版)


これは岡山県玉野市八浜町の金甲山(403m)から142.4km離れた大阪の高層ビル「あべのハルカス」の光が写せる奇跡について考察・実証したメモです。


■【予備知識ー地平線までの距離】

平地に立った人の目の高さをh, 地球の半径をrとすると
ピタゴラスの定理 r^2+d^2=(r+h)^2
から目と地平線との距離 d=sqrt(h(h+2r)) となる。

視点高さh=1.6m、r=6371000mを当てはめるとd=4515.22m。
なんと地平線まではたったの4.5km。ゆっくり歩いて一時間で行ける距離ではないか。
ちょっと拍子抜けである。

hを色々変えて自分で計算してみたい方は以下のURLを使うと楽なのでお試しを。
自分の居る場所の海抜が上がれば地平線は急激に遠くなることもよくわかる。

■【どれだけ遠くから見えるか問題】

「地上のある物体が別のある場所から見えるかどうか」というふうにこの問題をより一般化して考えてみたい。これは例えば遠く離れたところから富士山が見えるか?とか南天の輝星カノープスが見える北限はどこか?とか、余部埼灯台の光が何海里先からみえるか?とかといった問題だ。

この記事の主題に沿って各点にひらがなで符号をつけた。
視点高さh1から別の場所の高さh2の対象がギリギリ見えるとき、視点と対象を結んだ線が地面や海面と接する接点[う]、地球の中心[ち]、視点[き]、対象[あ]を結んだ二つの直角三角形[きうち][あうち]を考えればよい。


見る方も見られる方も同じで接点[う]までの距離は標高によって定まるので、双方の標高が与えられればギリギリ見える距離はそれぞれd1=[きう]とd2=[あう]を加算するだけで求まることになる。

地球は赤道が膨らんだ楕円体だけど概算なので真球、切り口は真円でと仮定、
平均半径r=6371kmを採用しておく。

視点または対象の標高hが決まればそこから水平線(地平線)までの距離dはピタゴラスの定理
r^2+d^2=(h+r)^2
から簡単に求まり
d=sqrt(h(h+2r))
であるが、実用的にはもう少し簡単化できる。
r>>hなのでh+2r→2rと置き換えても差し支えないのだ。

念のため具体的な数値を入れて誤差を確認しておこう。
海抜300mの視点や光源から水平線までの距離を確認してみる。
厳密式:sqrt(300(300+2*6371000))=61827.90632069
近似式:sqrt(300(  0  +2*6371000))=61827.17848972
62㎞の数値に対し誤差1m未満なのでこの程度の標高なら近似式を使って全く問題ないことがわかる。ロケット打ち上げなどを調べるときは当然この近似式だと誤差が大きくなる。

近似式にすれば見る側と見られる側を加算する際も定数sqrt(2r)で括って簡単化できる。
d1+d2=sqrt(2r)(sqrt(h1)+sqrt(h2))
r=6371000mを代入すると
d1+d2=3569.6(sqrt(h1)+sqrt(h2))
1海里1852mで割ると
1.927 (sqrt(h1)+sqrt(h2)) 海里

ところが船乗りの間で用いられる有名な式は
2.083 (sqrt(h1)+sqrt(h2)) 海里
とされていて係数が違っている。

これは大気差によって遠くのものが浮き上がって見えるため結果的に遠くの灯火まで見えるようになることを係数に含めているためだ。

船乗りたちの使う経験値は2.083/1.927=1.0809
つまり8.1%遠くまで見えることにしているわけだ。
もちろん大気の物性値の高度分布が異なれば屈折の様子も異なるので厳密な計算はできないが経験的・平均的にこの距離にある十分明るい灯台の光は見えることが分かっているらしい。

勘違いしてはいけない点がある。上記の式は灯台の光を夜間観察する際の経験則である。あべのハルカスの展望台の照明や航空障害灯が夜見えることと、同じ距離から昼間のビルの様子が見えることは全く別の課題である。コントラストが違うため後者の方が格段に難しいだろう。遠隔地からロケット打ち上げを捉える際も夜間なら容易に見えるものが昼間だと途中に散乱光が重なるため極めて難しい。ビルを照らす太陽光の反射と周囲の明るさとの差がビルの形を示すが、ビルと視点の間にある大気中の塵などによる散乱光が重なってSN比が悪化するためコントラストは必ず下がってしまう。

ちなみに距離の単位「海里(nautical mile)」は地球楕円体の緯度1’に相当する。およそ4万キロの円周を360x60で割ってみると1852mになる。これを距離の単位にしておくと海図を読んだりするときに非常に都合が良いのだ。海里も定義によって色々あるが端数のない1852mが国際海里として定められた。船の速度を表すノットは1海里/hである。

天文分野では星の位置測定などで常に問題になるため真位置高度がどの視位置高度に見えるかという式が様々に提案されている。これは大気の物性値の高度や位置による分布が光路すべてにわたって明らかでないと計算できない量であり推定するのは困難だ。

経験的には見かけ高度0度での大気差は角度の34’20”といわれるのでおよそ太陽や月の直径程度と覚えておけばよい。見かけ高度5°なら9’50”、見かけ高度10°なら5’といった具合だ。

沈む月を赤道儀の等速回転で追尾していると高度が下がるほど視野を外れて浮き上がるように見える。このような現象があるため太陽や月の出没時刻を正確に予報するのは難しい。

■【赤外線で昼間のあべのハルカスを狙ってみる】

あべのハルカスを昼間確認するためにはおそらく散乱光をカットできる赤外線撮影が一番有効だろうと考え、日没前に山頂展望台から木の枝越しに狙ってみたところ明石海峡大橋の主塔は簡単に捉えることができた。しかし、橋の下に見えるはずのあべのハルカスビルそのものは写らなかった。少し透明度も不足していたかもしれない。また、撮影に適した太陽高度は別にあるかもしれない。ビル壁面の素材によって反射率が異なるし、反射率は波長によっても異なる。赤外線は散乱光をカットしてコントラストを上げてくれるがガラス面の多いビルに対して背景とのコントラストが良いかどうかはわからない。今後の課題である。

課題はもうひとつ、日没時の太陽光が反射するラインを計算することでイリジウムフレアのように劇的に輝く日時がないか検討してみる必要がある。→GoogleEarthで確認すると西向きの面の法線はかなり北よりに向いており西日の反射光を見るのは年間を通じて無理そうだ。代わりに南向きの面は冬至の頃の日の出を反射して見えそうな角度である。今は2月なので手遅れだが年末までにはちゃんと計算してチャレンジしてみたい。月でも太陽でも金星でもよい。真北を0度とすると時計回りに120度あたりの方角から天体が昇る際にその光は金甲山方向に反射しそうだ。反射するのは天体の高度が低い間だけだろう。←と書いてはみたが大阪平野の東に400m越えの生駒山があるため金甲山とはお互い可視の位置関係になり水平な太陽光があべのハルカスに当たることはないので難しそうな気がする。




それにしても、西に向かって美しい夕日を撮影する観光客たちに背を向けて雑木林にカメラを向けてシャッター切りまくる奇妙なヒトになってしまった。


橋の下に見える光は航路灯。中央灯と右舷灯は見えるが左舷灯は木の枝に隠れている。
この赤外線改造カメラのフィルターはIR720。ホワイトバランスをカスタムとしほぼグレーに写るようにしている。


撮影は岡山での日没時、大阪は日没後になるのであべのハルカスの航空障害灯が点灯開始で写ったものと思われる。(道路より下にぶら下げている設備は存在しない。)ガラスで覆われた感じのビルは赤外線を乱反射しないためなのだろうか建物は写っていない。右隣のコスモタワーは建物の姿が写った。受け売りで「金甲山からあべのハルカスが見える」という人が居るが「おまえ、見たんか?」と問い詰めたい。遠くの灯台が発する光が見えることと灯台の姿が見えることは全く違うのだ。



主塔の北側、真西を向いて建つ高層マンション「リブコート垂水駅前プライムブルー」
西日に照らされて赤外線でも明るく輝いている。

■【ライトアップ中の明石海峡大橋】



金甲山山頂展望台(三脚込みで約405m)から樹木越しに見たあべのハルカス(本州側橋脚の少し右、橋の下に見える白っぽい光)とコスモタワー(さらに右の赤い光)

平日23時消灯の前後2コマを比較のため交互に表示するGIFアニメーションにしてみただけなので、ライトアップでこのように点滅させているわけではない。@motoko_ishii 石井幹子氏がそんな事するわけないので誤解なきように。

 明石海峡大橋のライトアップはWikipediaによると以下の通り。
  • 平日:春季は緑、夏季は青、秋季は赤、冬季は黄。
  • 休日:緑と青。
  • 時報パターン(正時):虹色。
  • 時報パターン(毎30分):誕生石をイメージした色。
  • 阪神・淡路大震災発生日の1月17日は、鎮魂の願いを込めた白一色となる(時報はなし)

実際にはもっと色々なパターンが用意されているので正確には管理者が発信する情報を確認すべき。消灯時刻も23時の日と24時の日があるし、ライトダウンなどというふざけた日もあるので要注意だ。
https://www.jb-honshi.co.jp/customer_index/kanko_event/lightup/lightup-akashi.html

ついでだが画面左端、須磨あたりの山影の向こうに生駒山山頂の電波塔につけられた赤の航空障害灯が見えている。157.8km先と遠いけど642m+塔の高さがあるので幾何学的には余裕で見える範囲である。須磨の山影は後ろに神戸大阪の明かりがあるためシルエットで見えていて、須磨浦の回転展望台も写っている。生駒山の向こうは暗いのでシルエットになっていない。

参考までに、撮影時のSCW。岡山から大阪平野まで上空に雲がなかったのである程度確信を持って出撃できた。ただ、雲があっても雲の下は晴れていて遠くがよく見通せる場合もあるので必ずしも光路全体に渡って晴れていなければならないということはないのかもしれない。



■【金甲山の奇跡】


基礎となる計算式がわかったところで岡山県金甲山の奇跡について確認しておきたい。

まずは方位の奇跡である。海面の盛り上がりが邪魔で見えるかどうかというレベルの話なので途中に島や山があると問題外なのだが下の地図を見るとわかるように金甲山とあべのハルカスを結んだ線上には見事に何も障害物がない。あべのハルカスの位置が少し北にずれると須磨浦の山に隠れるし南にずれると淡路島に隠れてしまう。家島諸島最南の松島も主塔より北に避けてくれている。ピンポイントで狙ったかのように見通せる位置にあるというのはもう奇跡としか言いようがない。


そして、距離の奇跡。

かなり前から巷でささやかれている話題に「大阪のあべのハルカスが見える本州最遠が金甲山らしい」というものがある。まぁこれはすでに実証された事実でありTV番組で取り上げられたこともあるようだ。


岡山県から「あべのハルカス」を遠望 本州の最遠は?
https://www.kyotocity.net/diary/abenoharukas_kashimap/saien_okayamaken/

あべのハルカス 本州最遠望 岡山県(金甲山)から143km彼方を望む!ギリギリ撮影記録

それでは前述の計算式に数値を当てはめて確認してみよう。

金甲山山頂展望台:h=403
あべのハルカス:H=320(この場所の標高はGoogleEarthから読み取った20mを採用し、ビルの高さ300mを加えた。)

大気のない場合の限界距離
3569.6(sqrt(403)+sqrt(320))=135514m

大気がある場合の限界距離は
135514*1.081=146477m

金甲山山頂とあべのハルカスの距離をGoogleEarthの距離測定ツールで読み取ると
142.4㎞ である。これを上記の限界距離と比べてみる。

あべのハルカス
大気なし限界距離  実際の距離  大気あり限界距離
135.5km   <  142.4km  <  146.5km

この2地点は大気がなければ見えないけれど大気があれば見えるという
絶妙な距離にあることがわかる。これはもう奇跡としか言いようがない。

大気あり限界距離ー実際の距離=146.5-142.4=4.1㎞

あべのハルカスよりも手前にあるコスモタワーについても計算しておこう。

大気のない場合の限界距離は
3569.6(sqrt(403)+sqrt(256))=128773m

大気がある場合の限界距離は
128773*1.081=139204m

GoogleEarthで計った実距離は133.4㎞

コスモタワー
大気なし限界距離  実際の距離  大気あり限界距離
128.8km    <  133.4km  <  139.2km

コスモタワーについても、大気がなければ見えないけれど大気があれば見えるという
絶妙な距離にあることがわかる。

大気あり限界距離ー実際の距離=139.2-133.4=5.8㎞

となり、あべのハルカスの4.1㎞よりも余裕がある。
従って標高が低くても近くに建っている分コスモタワーの方がより高く見える。
実写画像や動画はそれを実証している。

■【GoogleEarthによるレンダリング】



前述のGoogleEarth平面地図をそのまま使って上空約1000mから見たところをレンダリング。大気による散乱をシミュレートするモードはあるが大気差は反映されないので視点高度を上げないとあべのハルカスは見えない。青い横線は明石海峡大橋の海抜65mの道路部分。海上の線は金甲山山頂と各ターゲットを結んだもの。緑線は生駒山山頂の一番高い無線塔に向かう線。松島のシルエットでは左端と真ん中の凸部の中間の谷あたりを通るので撮影画像とよく一致している。建物の3Dデータも反映するモードでレンダリングしているためあべのハルカスやコスモタワーも立ち上がっている。生駒山の無線塔も再現されている。


犬島を含めた広い視野で位置関係を確認する

GoogleEarthのHFOVはデフォルトが約60度で明示的にこれを変更する機能が無いので超望遠でのシミュレーションができないと思っている人が多いがそんなことはない。HFOVを変更するKMLを一度読み込むだけでアプリケーションを終了するまでそのHFOVが保たれ再起動するとデフォルトに戻るという仕様だ。


Google Earth Studioを使うとFOV変更を含め様々な条件を指定して動画を作成することができる。Google Earth内で定義した位置や曲線をKMLでエクスポートし、Google Earth Studioにインポート&オーバーレイ表示することも可能だ。金甲山上空を通過してあべのハルカス手前までわずかに蛇行しながら飛行するシミュレーションを作成してみた。



■【須磨浦回転展望台と生駒山上電波塔群】


明石海峡大橋の左側には須磨浦の山上にある回転展望台が写っている。その山のシルエットのはるか先には生駒山山頂の電波塔群が写っている。主塔の次に目立つビルはTio舞子(101m)だろう。




明石市沖合高度300mからのGoogleEarthレンダリングでこれらの位置関係がよく分かる。
(赤い縦棒はあべのハルカスの位置と高さを表している。緑の線は金甲山と生駒山を結ぶ線。建物の3D表示をONにしているのでビルやマンションもリアルに表現されているがこれはシミュレーション画像である。)


■【神戸空港-UKB】

明石海峡大橋を夜間タイムラプス撮影するとわかるが離着陸とも明石海峡大橋の西上空のある一点で方向転換し空港に向けて同じラインをまっすぐ辿っているように見える。海上都市ポートアイランドのさらに沖合約1キロメートルに造成された人工島に造られた神戸空港はほぼ東西方向2500mの滑走路が1本あるだけだ。金甲山からは水平線の向こうなのでここに着陸する航空機はまっすぐ海面に突っ込んでいくように見えるのが面白い。


犬島の防波堤の明かりを真上に伸ばし、画面左端の強い明りを右に伸ばした交点にあべのハルカスがある。Borg77mm+Reducer 合成fl=330㎜とEOS6Dのファインダー内では明石海峡大橋のストロボライト3灯がかすかに確認できる程度なので混みいった枝越しの導入はちょっと難しい。方向がわかればISO6400、10秒程度であべのハルカスも判別できる程度に写るので400mm程度の望遠レンズを使える人はチャレンジしてみてほしい。上の画像は少しCropしている。純白の主塔は太陽光が当たっているとよく分かるので夕日が沈む前に位置を捉えて枝の影響ができるだけ少ない位置とレンズの高さを探しておけばよいだろう。展望台の上ではいくら移動しても完全に枝を避けられる場所は見つけられなかった。テーブルの上に三脚を立てても同様だった。

Wikipediaを見ると「神戸空港の運用は、着陸は東向き、離陸は西向きが基本であり、多少の追い風でもこの運用を行っている。」とのこと。東京に向かう機も一旦明石海峡大橋を越えて西に進み北にUターンしたのち東に向かうことになる。ただ離陸と重なった着陸機が南に回避したのち東側から極めて小さく小回りして着陸する場面もあった。


西に向かって離陸する様子


西から次々着陸する様子


西に向かって離陸する機を南に避け小さく回り込んで東から着陸する様子



タイムラプス(1コマ10秒)のうちの8コマを比較明合成したもの。神戸空港滑走路へ着陸する様子。まるで特攻隊だ。層状の不均一部分での屈折により上下方向に光が歪められ航空機が蛇行しているかのように写っている。明石海峡大橋のメインケーブルも歪んで見えている。撮影日は土曜だったのでライトアップの色は緑だった。


上の着陸機を含めて写っていた全部で11回の離着陸の様子を比較明合成したもの。
滑走路が近いので着陸のラインはきれいに揃っている。



タイムラプス動画にグリッドをオーバーレイしてみた。かなり手前にある松島沖の定置網の明かりはあまり動かないが、遠くになるほど大気差の影響はより大きくなり、その変動によって見かけの位置(高さ)が時間によって変化していることがわかる。このように変動するため厳密値は算出できない。船乗りたちが経験値で8.1%増しとしているのはこのような事情なので場合によってはこれより遠くまで見えるかもしれないし、透明度が良くてもこれより近くまでしか見えない場合もあることだろう。

左端に見える明るい建物はおそらくマンション「リブコート垂水駅前プライムブルー」と思われる。明石海峡大橋の素晴らしい眺望と西日のキツさを秤にかけるべき物件だろう。この物件の住人と友達になってベランダからレーザーポインタで合図を送ってもらいたいものだ。手前の海面が盛り上がっているため上層階しか見えていない。シルエットになっているのは松島。松島灯台は3秒に一回光っている。




山登りをする人にはよくわかることだろうが、こちらが高く上るほど遠くの高い山は低い山と比べてより高くせりあがってくる。金甲山の山頂展望台とほぼ同じ高さにある2等三角点の海抜は403.4mでこの高さから見たあべのハルカスとコスモタワーはほぼ同じ高さで明石海峡大橋の橋のすぐ下に双方の頂上が見えている。

金甲山自体は三角点の高さ以上に登れないが、山頂を取り巻く形で放送各局の電波塔が立ち並んでいる。この上に登ることができれば10m位は標高を稼げそうだ。このとき

大気のない場合の限界距離
3569.6(sqrt(413)+sqrt(320))=136398m

大気がある場合の限界距離は
136398*1.081=147446m
となり、三角点の高さから見る146.5kmよりさらに900mほど余裕ができることになるのでビル頂上の見かけの位置もせり上がり、もしかしたら明石海峡大橋の路面の上に突き出た姿が写るかもしれない。

TSC/RNCのタワーの上の方に広い足場があるので作業自体は可能だろう。
どこの局でもいいけど番組の企画でやってくれないものだろうか?

企画でやるなら屋根瓦用のリフトを立てかけてパン&チルト微調整付き望遠カメラを上下させれば夜間の高所作業でカメラマンを危険にさらすことなく足場よりもさらに高い位置からも撮影できるだろう。カメラ位置の上昇とともにあべのハルカスがコスモタワーよりも高くせりあがってくるとことが実証できるかもしれない。


この画像は山頂展望台より20m程低い駐車場から撮ったもの。40コマほどを平均化処理してある。光学系はセレストロンC8+フラットナーレンズ+HKIR EOS6D(D=200mm、合成fl=2500mm)気流の状態が良かったことや大阪方面の背景光が明るめだったことなどからハンガーロープがきれいに写った。その後何度か撮影のチャンスがあったがこのときのように解像できておらず運が良かったのだと思う。

このハンガーロープのピッチは資料「明石海峡大橋補剛桁の架設」
https://www.miyaji-eng.co.jp/technology/newsletter/media/14/no14-p083-093.pdf
によると14.2m、総数1044本である。ついでに、橋全体の長さは明石側960.0m、主塔間1990.80m、淡路側960.30、合わせて3911.10mとなっている。

駐車場に面して建つOHKの施設には極めて明るい白色LEDの照明が設置され駐車場側を照らしている。これに加えて建物の裏側にも同様の明るいランプが東方向を照らしていてこちらは空中のちりやほこりにあたって散乱するため明石海峡大橋を撮影する際にものすごく邪魔になる。そもそもOHKの施設のせいで肝心の視界が遮られているので橋の方向が樹木に遮られることなく観察できる場所は極めて限られているのだが、かろうじて見つけた撮影場所までOHKの光害で邪魔されるというのは実に腹立たしい。防犯のためなら施設内だけを照らすようにしてほしいものだ。

近年アホみたいに全方位を鋭く照らす白色LEDが市街地、ど田舎を問わず激増していて実にうっとおしい。照らすのは仰角マイナス30度位に自主規制してほしいものだ。

23時ライトアップ消灯直後しばらくはあべのハルカスの展望台は白っぽい明かりがともっていたがこの撮影時は営業終了で既に消灯、赤の航空障害灯だけになっていた。

国土交通省航空局交通管制部 管制技術課航空灯火・電気技術室 から公開されている
「航空障害灯/昼間障害標識の設置等に関する解説・実施要領」という文書に航空障害灯その他に関する決まりが具体的に書かれていて興味深い。
https://www.cab.mlit.go.jp/tcab/img/beacon/oblobm300327.pdf
とりあえず日没から点灯する決まりになっているというのも有益情報だ。

黒く写っている海面は明石海峡大橋よりも25kmほど手前の海面である。海面に浮いている明かりは家島諸島の南に位置する松島の沖に設置した定置網のものだろう。橋の下で光っている緑の灯火は橋梁灯の左舷端灯。水源に向かっているときの航路の左側限界をあらわしている。

河川を遡るときは水源は明らかだが海についてはどうなるのか?潮の動きで海水は往復するし水の動きとか海流を元に決めているわけではなく、純粋に定義の問題として定められている。日本全体で見ると与那国島が水源ということになっていて他に取り決めがなければこれに従う。ところが瀬戸内海については阪神港が水源と定義され、さらに瀬戸内海の中でも宇高航路については宇野港が水源ということにしてあるらしい。

この画像の明石海峡大橋の場合岡山から阪神港側、つまり水源方向を見ているので左側が左舷となり緑の灯火がついている。船がくぐる大きな橋がかかっていれば必ずこの灯火がついているはずなので注意してみよう。海にはセンターラインや路側帯はないがよく見ると灯標、浮標などで様々な情報が表示されている。赤や緑は飾りじゃない。石井幹子もこれを邪魔するようなイルミネーションはつけられないだろう。灯火の色が見えない昼間はどうするか?これは形状で決まっていて緑は四角形、赤は三角形の標識である。形象物はいろんな方向から見るので結局円筒または円錐を上部に取り付けることになる。

海上保安庁の資料に詳しい説明がある。
航路標識の設置及び管理に関する ガイドライン (平成30年8月1日改訂)

■【犬島の灯標】

金甲山から東の海を見下ろすと最初に見えるのが犬島だ。
地理院地図で確認すると防波堤に1灯、あと海上にも1灯ある。

灯台については詳しい方がまとめたサイトが色々ある。たとえば
犬島のちょっと東方の岩礁に設置された「犬島白石灯標」の昼間の写真もあった。

大昔の犬島は海賊の根城だった。犬島で採れる花崗岩は有名で江戸時代には大阪城の改修のため犬島産の巨石を献上した。また明治期に大阪港の造営のため大規模に採石が行われ島は大いに賑わい1900年には人口5,6千人にもなったそうだ。GoogleMapの空中写真を見ると採石場のあとに水が溜まってできた深い池が点在しているのがわかる。

築港の完了とともに採石は廃れ、代わりに実業家坂本金弥が創業した銅の精錬所ができた。倉敷の帯江にあった銅の鉱山で産出した鉱石をここで精錬していたらしい。坂本金弥は明治22年頃三菱財閥より帯江の鉱山を譲り受けて近代化に着手した。当初は犬島と同様のレンガ造りの煙突があって精錬を行っていたが煙害や鉱毒が問題となり明治42年犬島への移転を余儀なくされたらしい。当時の写真では帯江の山の上に立つ高い2本の煙突が見えている。大原美術館の絵画収集でも有名な成羽出身の画家、児島虎次郎が酒津から描いた風景画にもその煙突が描かれている。鉱山の場所とは異なり関連施設の可能性が高いが、最近まで当時の煙突のかけらがまだ現地に転がっていた。写真は2010年撮影。自転車のホイールサイズは26インチ。現存するかどうかは不明である。帯江銅山の坑道は埋め戻されゴルフ場になっている。




帯江銅山の歴史については倉敷市笹沖にある近藤歯科医院の院長コラムに詳しい。
「評伝 坂本金弥」というのもあった。玉島の弥高山の鉱山も手掛けていたらしい。昔ハイキングで登ったとき富トンネルから少し下ったあたりで坑道入口やズリを見たことがある。

第一次大戦終結に伴う銅価格の暴落、帯江銅山の採掘量減少など様々な理由から犬島の精錬所はたった10年で操業を停止した。精錬所が稼働していた頃には島だけでなく対岸の宝伝もかなり賑わっていたようだ。稼働を止めてのち精錬所は廃墟化していたがその建物やレンガを積んで作った煙突などが崩れつつも残っており、コンバットゲーム愛好者のゲレンデになったり、時にはTVドラマ西部警察のロケ地になったりしていた(1984年7月)。

経年劣化とか落雷とかでさらに壊れたり、安全のため取り壊されたりで今は本数も減ってしまったが以前は今より多くの煙突が立っていたように思う。現在残っているものは耐震補強などを施しているはずだ。

1995年頃ベネッセの招きで直島を訪れた現代美術作家の柳幸典氏は犬島の廃墟の魅力に惹かれ、アートプロジェクトの構想を練り始めた。やがて彼は旧犬島郵便局の建物に移住して制作活動の拠点とした。犬島精錬所美術館は2008年4月に開館した。採石場跡が深い池になっており以前はここを産廃処理場にしようという計画があったらしい。アートプロジェクトのおかげでこの計画は阻止され島の環境が守られたとも言える。

柳氏が郵便局舎に住み込んで制作活動をしていた頃、使っていたMacの調子が悪くなったとの連絡を受けて筆者は復旧のため郵便船に乗って宝伝から島に渡ったことがあった。当時は本当に人が少なく柳氏らが島で一番の若者だった。

柳氏のプロジェクトの構想から実現までの概要は下記に記されている。

犬島アートプロジェクト ログブック
http://www.yanagistudio.net/inujima/logbook.html
この中のどこかになぜか筆者も写っているという...



岡山市内某所 プロジェクトのアジトにて 2003年10月開所式前夜 

■【金甲山から明石海峡方面の視界】

金甲山山頂には1961年両備グループが作った展望レストラン「金甲山レストハウス」があった。往時は観光バスや自家用車で観光客が押し寄せ賑わっていたらしい。やがて瀬戸大橋の開通により金甲山への観光客は減少し展望レストランは2001年に廃業、その後廃墟化していたが2010年の両備グループ創業100周年を記念して展望所として整備し一般開放してくれたとのこと。下記小嶋光信氏のメッセージに詳しい経緯がつづられている。

2010.06.30
隠れたパワースポット金甲山の神峯神社の奉鎮祭
両備グループ 代表 
小嶋光信 
私が両備グループの代表になった12年前、故松田基会長がこよなく愛したこの金甲山レストハウス、蒜山塩釜ロッジ、京山ロープウエーと両備ガーデンをどのようにするかという経営以外の課題があった。経営以外の課題というのは、経営としては継続が難しいが、それでも両備グループとして守っていかなければならない事業という意味だ。 特にこの金甲山は、故松田基会長が亡くなる年まで、毎年お正月には初日の出に参拝された場所であり、私も最後までお供した思い出の場所だった。  以下省略 

この場所を大切に思ってくれているのはうれしいことだ。 この記事に写真で登場する猫ちゃんは筆者が2008年に遭遇した猫神様ではなかろうか。ご尊顔が同じような気がする。2008年当時は犬島から先を遮る枝もなく明石海峡方面はすべて見えていた。ちなみにあべのハルカスの着工は2010-01-09、そして竣工は2014-03-07である。この山頂からあべのハルカスの明かりが見えることになろうとは100周年記念事業の当時誰も思いつかなかったことだろう。

ちょうど犬島美術館が開館した2008年に金甲山山頂展望台から撮った写真があった。当時は雑木が視界を遮ることはなく、犬島や松島、明石海峡方向もちゃんと見えている。山頂は逆に叢で三角点も見えない状態だった。2022年現在は山頂の草木はきれいに刈られて保護石ごとコンクリートで固められた三角点もすべて露出している。




猫神様が祀られていた。

東方向、犬島、小豆島、松島が見えている。KSB/RNCの鉄塔から南を向いたアンテナもまだ見えている。

左上の島影が松島 犬島の左端と松島の右端を結んで延長した線の少し右に明石海峡大橋の本州側の主塔がある。この画像では橋や淡路島は分からない。



この日はたまたま夕日を背にして瀬戸内海に映る影金甲山が観察できた。
ここまで2008年撮影 



2010年の状況


2010年撮影 枝が伸びてきたがまだ視界は確保されていた。2008年には見えていた四国側を向いたアンテナは枝に隠れて見えなくなった。右下の朽木に保安林の看板が掛けられている。TSC/RNCのタワー足場の方がこの展望台より少し高い。あの場所なら視界を遮るものもなく完璧なのだが...
ここにfl=5000mm程度の超望遠+CMOSカメラを常設しあべのハルカスやコスモタワーを明石海峡大橋とともに長期間間欠撮影しておけば大気差の変動により見かけのビルの高さが変動することが視覚的に捉えられるかもしれない。



2022年2月の惨状 一番枝が伸びているあたりが一番おいしい明石海峡方面。犬島も完全に隠れてしまった。

この山頂展望台の一番の価値は明石海峡大橋方面の視界である。その橋の下にあべのハルカスの照明が見えるなんてもうダイヤモンドの夜景といってもいいくらいだ。香川や瀬戸大橋方面はほかの場所からいくらでも眺めることができるが、明石海峡から大阪を見通せる場所はここだけだ。その稀有な視界を伸び放題の雑木で隠してしまっているのは何とも惜しい。行政の許可を取った上で以前のように犬島から先が見える程度に枝打ちしてもらえないものだろうか?展望台の登り口の立ち木(枯れ木)に取り付けられた「保安林」の黄色い看板がにらみを利かせているのが恨めしい。


2022年2月。山頂の三角点付近は草も刈られ、樹木もきれいに剪定されている。後方は岡山市街。


2024年1月撮影。冬季は葉が落ちるため枝の隙間からかろうじて明石海峡大橋方面が観察できるようになるが、見通しがよい隙間を探すのは不可能。明石海峡大橋そのものは近いので20m低いOHK前の駐車場から障害物なしに見える。しかし駐車場の高さからはあべのハルカスの明かりは大気差が大きな時でないとかなり見えづらくなる。


保安林制度
https://www.pref.okayama.jp/page/detail-73065.html

ついでに金甲山周辺を岡山県のGISシステムで調べてみる。

http://www.gis.pref.okayama.jp/pref-okayama/Map?mid=6&mpx=133.97467698869892&mpy=34.55292223639438&mps=50000&mtp=pfm&gprj=3&mcl=20,8,1,108;20,9,1,109;21,11,1,111

自然公園法の特別地域 ←環境省管轄
地域森林計画対象民有林(地森計) ←岡山県管轄
保安林 ←農水省、林野庁、都道府県の管轄
の3通りの網が重ねて掛けられていることがわかる。



とりあえず許可なく現状を人為的に変更することは自然公園法や森林法違反になる。
所有者といえども手出しできない部分もたくさんあるのだ。
逆に所有者には適正な山林の管理を行う義務も課せられるので完全放置もだめで問題があれば都道府県から指導が入るのかもしれない。
眺望確保のために一部だけ枝打ちをするのは水源涵養や治山の観点からは特に問題ないと思うのだが...

山頂展望台からは本来明石海峡大橋方向の風景がきれいに見えるにもかかわらず、雑木の枝が伸び放題のせいで肝心な場所が見えなくなっている現状を何とかしてほしいものだ。

岡山県のGISシステムによると山頂付近は民有林となっている。所有者は神峯神社の管理者?送信所を設置しているNHKや民放各社?それとも古くからレストハウスを建設運営していた両備グループ?いずれにしても展望の失われた「展望所」はいただけない。小嶋光信氏に直訴すれば剪定していただけたりしないものだろうか?

環境省のホームページから瀬戸内海国立公園 概要・計画書
を開くと、中国四国地方環境事務所による
瀬戸内海国立公園(岡山県地域)管理計画書(平成19年11月)
が見つかる。その10頁には以下のような文言がある。
山頂展望所の東側の状況はまさにこれに該当するものだと思う。
国会議員、県会議員等を通じて環境省に働きかけてみる価値があるかもしれない。

3 風致景観及び自然環境の保全に関する事項及び適正な利用の推進に関する事項
(2)各地区に共通する保全・整備方針
  ④ 好展望地、多目的園地として多くの人に訪れてもらえるよう、普及啓発及び維持管理に努める。
  • ア 誰にでもアクセスの容易な展望地の情報や、交通手段が限られている地域へのアクセス情報、 新たな見所や利用形態など、利用者への情報の発信に努める。 
  • イ 関係機関等と協力し、地域の特性を活かした利用メニューの開発及び利用者へ利用方法に関 する情報の発信に努める。 
  • ウ 樹木が眺望景観を阻害している場所(特に展望園地、遊歩道先端部展望地)については、現在の利用状況及び地元住民の意向を踏まえたうえで、樹木の伐採・剪定を検討する。また、伐採後、再び展望が阻害されることのないように、地元で展望を維持していくための維持管理体制を確立する。

【2024年10月追記】
この件について両備グループにお手紙していたところ、10/7に小嶋光信代表から直々にメールで返信いただいた。現地の状況も確認してくださったとのこと。貴重なお時間を割いていただき感激である。抜粋すると

確認すると木を切るのが物理的にも所有権上も国立公園特別地域的にも難しそうです。
1.金甲山の元レストハウスの土地は両備の所有ではなく、八浜の住民の方が管理する土地(神社の所有?)のごく一部を借りているもので、借りている土地だけは両備で手入れをさせていただいています。
2.展望台の南東の道路の先に大きな木と電波塔がありますが、そこのあたりの土地は勿論両備の土地でもなくまた借りてもいないので手が出せません。

とのことだった。 だいたい予想していたとおりだが確実な情報が判明して嬉しい。


■【電波塔マニアさま】

各地の放送局施設を踏査している奇特な方を発見
岡山県については下記一覧にあり、金甲山山頂付近の施設についても詳しく記載されていてすばらしい。
http://www.kouiki.com/housou2/okayama.html
金甲山を島と書いてある点については同意できないが...

この方は山陽放送 高梁ラジオ送信所も実地調査されていた。

「霧の海展望の丘」からアンテナが見えていて筆者も眺望確認のため一度訪問したことがあるが山頂部の一番いい所に設置してあり、施設周囲の平坦な部分はおそらく茅場として利用しているのだろう。無人の施設からはRSKラジオの音声が常時流れていて確かにちょっと不気味であった。
http://www.kouiki.com/housou/rsk-takahashi/rsk-takahashi.html

明石海峡大橋の画像の左端に写っている生駒山のタワーについてのレポートもあった。http://www.kouiki.com/housou2/osaka.html

他にも「しくいちの散歩道」様
https://491mhz.net/soushinjo/okayama/kinkouzan.html

や「送信塔見て歩きWeb」様
https://mitearuki.sakura.ne.jp/
などが参考になる。

■【付録ー大気差についておさらい】

地球には大気がある。温度、気圧、密度など諸条件によって程度の差はあるが見かけの高度がゼロに近づくほど大気による屈折の影響で遠くの物体は浮き上がって見えるようになる。これを大気差と呼び天文学の世界では天体の視位置を観測する場合常に問題となるので真の位置と視位置の差を求める式が色々提案されている。

Wikipediaで大気さの項を見ると例えば

Tを地上の気温(℃)、pを地上の気圧(ヘクトパスカル)として、

を使用する。湿度や観測地の高度を考慮した式もあるが、いずれにせよ大気の状態は一定でないので厳密な式は存在しない。たとえば、上の式はあまり高度が低い恒星には当てはめることはできず、 程度でしか成り立たない。 で標準偏差以内といった程度である。


国立天文台のサイトによると

http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/faq/glossary.html



天体観測であまり低い位置の観測を行うことは少ないだろうし、大気の物性やその勾配は一定ではなくあくまでも経験的な近似値を仮定することしかできない。天体の視位置については大まかに下のような表もある。高度ゼロにおける大気差はほぼ太陽や月の直径分程度と思っておけばいいだろう。表からわかるように高度がゼロに近づくほど大気差は急激に大きくなる。光源から観測者までの光路に存在する大気の物性値をすべて考慮しなければ大気差の計算はできないので現実の値を理論的に求めることはできない。


大気差の概略値

視高度 大気差

34’20”

9’50”

10° 5’

20° 2’40”

30° 1’40”

45° 1’

60° 0’30”


さらに大気中にある遠方の山や建築物を見る場合はさらに条件が複雑になるだろう。

船乗りの世界では幾何学的な理論限界の8.1%増しで行くという経験則が採用されていることがわかったのは今回有益であった。

灯台ではこれを地理的光達距離と呼び、光源が無限に明るければ水平線を越えて届く距離だ。眼高は当然船によって異なるが、一般に5mを使うことになっている。
灯台の到達距離はこれに加えて光源の明るさや大気の透過率により届く距離の限界がありこれを名目的光達距離と呼ぶ。海図に出ている光達距離はこれらのうちのどちらか小さい方らしい。

地理的光達距離は純粋に灯台設置場所の海抜+塔の高さで決まる。名目的光達距離は光源のパワー、波長や大気の透過率、人間が認識するわけだから交互点灯、閃光、連続光など光源の光り方にも影響を受ける。名目的光達距離については日本の基準は長らく国際基準とずれていたが2003年に改訂され従来よりも短くなった。


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