水星の尾

2021-01-08

Mercury SodiumTail ナトリウムテイル 水星 水星の尾

t f B! P L

Sodium tail of mercury



2021-10-29 05:23:50 JST

UT:
DATE-OBS = '2021-10-28T20:22:30.741' / Image created time ←FrameNo.01
DATE-OBS = '2021-10-28T20:25:17.291' / Image created time ←FrameNo.19
Exp: 10s x 19
ASI1600MMPro -15degC Bin4
Borg107FL D=107mm フラットナーを含む合成焦点距離は649mm
(PlateSolveで夜のうちに確定済み)画角は1度33.55分×1度10.76分

水星撮影時刻には薄明でガイド星をロストするためガイド不可、赤経モータ駆動のみの撮影となり、撮影中に中心が徐々にずれていた。恒星は数えるほどしか写っていないため PixInsightのStarAlignmentも不可。CometAlignment機能で水星の中心を位置合わせをした後ImageIntegrationでAverageすることにした。


以下PixInsightの処理フロー

●WBPP(Bias*60, Dark*60,Flat*60, FlatDark*30,Light*19) でキャリブレーション

●撮影の際の恒星によるガイドは薄明のため不可能になっておりガイドはずれているが
この段階では写っている恒星が少なすぎるためStarAlignment不可能。
そこでCometAlignmentによりRegistration

●ImageIntegrationでAverage

●DynamicBackgroundExtractionで薄明の傾斜を減算

●HistgramTransformでストレッチ

DBEやフラットを適用する前のCometAlignmentしただけの暫定処理では30分ほどかと思われていた尾の長さは、補正後写野の端まで伸びており少なくとも1度はあることが確認できた。水星をもう少し下に配置しておけばよかったと後悔。その後明け方の東の空が晴れるチャンスは2,3度あったが、もやっていたり雲に邪魔されたりで結局この日以降チャンスは訪れなかった。


Stellariumで同じ写野を表示 撮影時の水星の高度は大気の浮き上がりこみで5度4分


高度が低いと大気の影響が無視できない。
大気による減光、散乱、浮き上がりをStellariumでシミュレートするとこうなる。

撮影後の様子。水星はまだ見えている。こんなふうに透明度の良い空だから撮れたのかも。
撮影場所は岡山県高梁市の標高約450m。備中松山城が見える場所でもある。


■水星の尾を捉えるための条件

1.尾が伸びているか?→太陽との距離の変化率が重要らしい。水星の軌道は離心率の大きい楕円軌道なので太陽との距離は大きく変動する。その様子はStellariumを使うと簡単に確認できる。緑の線が太陽と水星との実際の距離。距離が離れつつある時の方が尾は顕著になるそうだ。だからといって条件最良の日以外は観測しないなんてことはないだろう。そもそも観測のチャンスは極めて限られているし。

地上で観測するための条件

2.太陽と水星の離角(見かけの距離)が離れているか?

これもStellariumの同じ画面で表示できる。(黄色い線)ただし、いくら離れていても水平に離れていたのでは水星が出た時に日の出となるので水星は見えない。日の出の時刻における水星の高度が重要。Stellariumで最大離角の時期ごとに太陽と水星を結んだ線を確認すればよい。垂直になっていればベスト。

3.観測地の標高 これは極めて重要。高いほど早くから水星が見え始めるので有利。

4.地形 水星の昇ってくる方位を邪魔する地形がない場所を事前に探しておくべき。
  いつでも良いので事前に固定撮影で適当に星野を撮り、Stellariumで時刻情報を
  合わせて比較すれば地上のシルエットの正確な方位角が確認できる。

5.月齢 近くにいるということは新月が近いので影響は少ないかもしれないが...

6.天候 日頃の行いに気をつける。SCWを毎日見てチャンスは逃さないようにする。


Stellariumの計算機能「惑星計算」。基準日が画面に表示されないのは残念


「グラフ」機能でも所定期間、間隔のグラフが表示できる。2022年の変化は以下の通り。




以下は2021年1月に書き始めたメモ
フィルタの入手に2ヶ月かかった。
2021年5月の東方最大離角のチャンスを逃し
2021年10月の西方最大離角でようやく撮影ができた。
年頭の抱負が意外と簡単に叶ってしまった。

■水星から伸びるナトリウムの尾が撮れるかも

 イタリアのアマチュア天文家 Andrea Alessandriniさんが水星の尾を撮影したという記事を去年の暮に見かけた。 

この方は Edmund Optics からカスタムのフィルタを調達した模様だが詳しくは書かれていない。 Edmund Opticsのサイトを見るといきなりカスタム品のスペックを指定するフォームになるのでちょっと二の足を踏んでしまう。 

もうおひと方、Twitter上で発見したドイツのDr. Sebastian Voltmer さん。
質問すると親切にメーカーのリンクも教えてくれた。 
SodiumTailの写真をアップしたところ多くの人からフィルタに関する問い合わせを受けているらしい。 

で、教えてもらったのはIntor Inc. 
言語をjaにしておくとショッピングカートの遷移に反映する。  

ナトリウムのD線を中心波長とするフィルタがShoppingCartで選択できるようになっていて標準仕様としてメニュー化されている模様。 

半値幅は10nmと3nmが選べるが薄明をできるだけ減衰させたいので半値幅3nmを選択してサクッとポチった。 

バンドパスの仕様は




■フィルタのおねだん

フィルタ径は何種類かあるが2”を選択で$286.00
 UPSのワールドワイド配送料は一番高いやつがデフォルトになっていたので安いやつに選び直すと$99.12

ちなみにUPSのオプションの内容は下記で確認できる。 https://www.ups.com/jp/ja/shipping/international/services.page?

 これ以外に到着時に手数料や税金が追加になるかも。 


 ■波長について 

ナトリウムの輝線は歴史的にD線(近接して2本あるのでD1,D2)と呼ばれている。
 
Wikipediaで波長を確認すると
D1 589.592424 nm
D2 588.995024 nm 
注文したフィルタのCWL(中心波長)は589.6nm 
半値幅FWHMは3nm(ラインナップには10nmもある) 


 ■彗星でも見られる 

というかこっちの方が自然か。
彗星のナトリウムの尾について日本語で詳しく書かれた記事があった。 https://pholus.mtk.nao.ac.jp/COMET/comet_handbook_2004/1-6.pdf 

ヘール・ボップ彗星で顕著に見られたらしい。 
昔フィルムで撮った写真があるので見返してみよう。 ネガ見つかるかな?  

ナトリウムの尾は去年来たネオワイズ彗星でも観察されていてバッチリ撮影していた人もいた。 
こっちはそもそも彗星自体まともに観察できる天候の夜が存在せずだったのが悔しい。 
非常に淡いけれど月からもナトリウムの尾はでているらしい。



2021-01-06 Order 
2021-01-06 Payment 
........ 
2021-01-15 Delivery date inquiry 
2021-01-15 Answer: "ship early next week" 
........... 
2021-01-27 Delivery inquiry again 
..... 
2021-02-02 Still no answer from Intorfilter.com
..... 
2021-02-04 
Subject line of email from Intor, Inc. 
"Hello, Let me start this email with an apology to you." 
What happened to the company? 
How about the order I paid for? 
When will I get my bandpass filter? 
Can I get it in time for the day of Mercury's greatest western elongation?


なんか社内でゴタゴタがあった模様。すぐさま自分の発注について問い合わせると最速で発送するとの回答があり一安心。発送されたあとはトラッキングを確認するのみ。
2/19にようやく現物が届いた。
測定シートの日付は2/10になっていた。ひょっとして慌てて製造したのかな?





写真ではわからないが、表面を目視するとなんだか拭いた跡のような大きなムラがある。
無水アルコールでクリーニングしても取れる気配がないのはちょっと嫌な感じ。
ネジも切っていない分厚い金枠にはめ込んで接着しているような作りで光学的な精度は疑問。案の定、Borg77mm+Reducer 合成fl=330mmに仮組して夜間の街灯を見てみると
激しく歪んだゴーストが写り込んできた。対物レンズに近い側にフィルタを配置すると
像の悪化が著しいのでやはりセンサに近い側に配置するしかない。

干渉フィルターの常で表面反射率が高いので、フィルタで反射した光がフラットナーのレン図面で更に反射してセンサー面にゴーストとして写り込んでいる気もする。

対策としてはフラットナーなどの補正レンズは使わないことにするしかないかな、などと考えてみるが、センサー面とフィルタ裏側との間で多重反射して同心円状のゴーストが写り込むことがアルニタクでは発生した経験がある。(Astrodonのフィルタではこういったゴーストは劇的に少なくなっている。お値段も劇的だけど...。)

フィルタの評価は難しいがとにかく撮ってみて尾が写ってから本腰を入れて考えればよいということで水星の離角が大きくなるまで放置。

フィルタの取り付けについては、DSLR, CMOSカメラ共通でEOSのマウントアダプタを
介して接続しているのでこの中に落とし込んで撮影することにした。偏心ゴーストはフィルタ全体を回転させると尾の出る方向を邪魔しない側に寄せることでお茶を濁すことにした。

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