人工衛星や彗星・小惑星の位置や動きをStellariumで表示する

2023-08-21

Celestrak ICESAT2 Starlink Stellarium

t f B! P L

人工衛星や彗星の位置をStellariumで表示する

ICESat-2やDaqi-1衛星が照射するレーザ光の観察については下記投稿に移動しました。
https://apnea3.blogspot.com/2024/06/icesat2.html



2023-08-20 
StellariumによるStarlinkG6-10のシミュレーションと
SONY製IMX-327センサと2.8mmレンズの組み合わせで撮影した実際の動画とを 
時刻合わせで並べて表示しています。視点は岡山県倉敷市です。

人工衛星の情報は例えばCelestrakのサイトから得ることができます。 

 T.S. KelsoさんのTwitterアカウント(@TSKelso)をフォローしておけばCelestrakの最新情報が得られます。

 https://celestrak.org/NORAD/elements/supplemental/ にアクセスすると例えば今日、2023-08-21現在は打ち上げを控えているStarlink G7-1のデータが5組表示されています。(日付時刻はUTなので日本時間に直すには9時間を足してください。)

 

Starlink G7-1 Pre-Launch
Launch: 2023-08-22 06:04:00 UTC.
Deployment: 2023-08-22 07:06:32.440 UTC.
 
Backup Launch Opportunity #1
Starlink G7-1B1 Pre-Launch
(Starlink-G7-1B1 Pre-Launch RMS Data)
Launch: 2023-08-22 06:54:40 UTC.
Deployment: 2023-08-22 07:57:12.440 UTC.

Backup Launch Opportunity #2
Starlink G7-1B2 Pre-Launch
(Starlink-G7-1B2 Pre-Launch RMS Data)
Launch: 2023-08-22 07:45:20 UTC.
Deployment: 2023-08-22 08:47:52.440 UTC.

Backup Launch Opportunity #3
Starlink G7-1B3 Pre-Launch
(Starlink-G7-1B3 Pre-Launch RMS Data)
Launch: 2023-08-22 08:36:00 UTC.
Deployment: 2023-08-22 09:38:32.440 UTC.

Backup Launch Opportunity #4
Starlink G7-1B4 Pre-Launch
(Starlink-G7-1B4 Pre-Launch RMS Data)
Launch: 2023-08-22 09:26:40 UTC.
Deployment: 2023-08-22 10:29:12.440 UTC.

こんな風に予備のスケジュールが#1~#4まで4セット組まれていて正規の時刻より後ろにずれることはよくあります。天候のため日付がずれることもあります。

SpaceXのサイト

https://www.spacex.com/

のUpcoming Launch からWatchボタンで打ち上げのライブ配信サイトで最新の情報が表示されるので、 予定時刻候補のうちどの時刻で打ち上がったかがこのサイトから確認できます。 ライブ配信を見ていれば衛星フェアリングが分離して積層状態のスターリンクが 宇宙にさらされるところまで映像で確認できます。


例えば「Backup Launch Opportunity #3」で打ち上がったことがわかったら
Celestrakの「Starlink G7-1B3 Pre-Launch」の文字をクリックします。
これがリンクになっていて開くとこのような文字が表示されます。

STARLINK-G7-1B3 STACK
1 72000C 23124A 23234.40176435 .00097766 00000+0 25497-3 0 02
2 72000 53.0524 189.3225 0007370 250.5403 116.9466 15.94146148 13

STARLINK-G7-1B3 SINGLE
1 72001C 23124B 23234.40176435 .00657004 00000+0 16964-2 0 08
2 72001 53.0523 189.3225 0007464 249.6402 117.8471 15.94145389 17

これが予報された衛星の軌道要素ですが実は必要なのはこのページのURLです。

https://celestrak.org/NORAD/elements/supplemental/sup-gp.php?FILE=starlink-g7-1b3&FORMAT=tle

これは先程のリンクを右クリックして「リンクのアドレスをコピー」とやっても構いません。

これが分かれば無料のプラネタリウムソフト「Stellarium」にこのURLをセットして人工衛星の位置を表示できるようになります。

Stellariumをインストールして使えるようになったら「Alt-Z」で人工衛星プラグインの設定画面を出します。

「出典」タブに軌道要素の配布元URLを自由に追加できるようになっているので「配布元の追加」アイコンを押し、先程コピーしたURLを貼り付け、保存アイコンをクリックします。すると上の画面にURLが追加されるのでそのURLの左にあるチェックボックスをチェックします。


「設定」タブに切り替えて「すぐに更新」ボタンをクリックするとすべての衛星の軌道要素が最新のものに更新されるとともに新しい衛星が2個追加されたことが表示されます。


「人工衛星」タブに切り替えて左上のフィールドに「G7」と手入力すると

STARLINK-G7-1B3 STACK  

STARLINK-G7-1B3 SINGLE  

の2つが表示されます。どちらでも構わないのでクリックして「軌道を表示」にチェックしておきます。また、衛星の色、軌道の色を画面下の灰色四角のアイコンで変更することもできるので好きな色をつけておけば分かりやすいかも知れません。


で、この衛星の名前をダブルクリックすると衛星が選択され、中央に表示された状態になります。時刻を早送りすれば朝夕に地平線より上に昇ってくるタイミングを探すことができます。日付時刻を表示し、時間をクリックして上下矢印で大まかに動かすと探しやすいでしょう。


当然のことですが、低軌道衛星を見る場合地上の位置が変わると見かけの方向も大きく変わるのでStellariumを使う際は自分の所在地を設定しておく必要があります。画面左に表示されるパネルの一番上に観測地を設定するアイコンがあります。設定すると通常画面の左下にその地名が表示されるようになります。

衛星がどのあたりを通過するかによって見える方向は大きく変わり時刻も少しズレてくることがわかります。どこかで天頂を通る予報が出ていたとすると、そこから280kmほど離れた場所からはみかけの高度が45°までしかあがらないといった具合です。

通過時刻も重要です。今の時期だと20時台ならOKだけど19時台だと明るすぎて見えづらいなど薄明との関係もあります。これは経度にもよるので一概には言えません。双眼鏡を使えば見えるとか望遠レンズで撮影すれば写ったりとか条件により様々です。

なお、 Pre-Launchの軌道要素はあくまでも仮のものです。打ち上げ後しばらくして衛星個々の軌道要素が確定すると正式なURLが発表され、こちらをStellariumにセットするとすべての衛星の位置が表示されるようになります。

例えばStarlinkG6-10(冒頭の動画のグループです)は下記ページの上から3行目のリンク

Latest SupGP (TLE) Data

https://celestrak.org/NORAD/elements/supplemental/sup-gp.php?INTDES=2023-122&FORMAT=tle

に全衛星の個々の軌道要素が含まれています。最新の軌道要素が発表されたならStellariumにセットしたPreLaunchのURLは削除してそのURLに置き換えてください。


衛星は目標軌道に向かって常に電気推進で個々に移動しているため軌道要素は常に変わってゆきます。Alt-Zで衛星プラグインの設定タブを開いて「すぐに更新」をクリックしたのち位置を表示するようにしましょう。

Starlink Group7-1は無事打ち上げられ衛星の配備も完了しました。

個々の衛星の軌道要素も確定したようでT.S. KelsoさんのTwitterアカウント(@TSKelso)で最新情報の告知がありました。


メッセージの最下行のリンクをクリックするとメッセージの画像のページが開きます。

必要なのは赤丸で囲んだURL情報です。このURLはこのグループの衛星すべての最新の軌道要素が含まれたテキストになっており内容は随時更新されます。



従ってこのURLさえStellariumにセットしておけば、更新のたびに全衛星の軌道要素が最新の情報に入れ替わり、正しい衛星の位置が表示に反映されるようになります。

Stellariumはセンサやレンズのパラメータを設定すれば画面上での画角をオーバーレイ表示するプラグインがあるので自分の機材の設定を入れておくと撮影計画が立てやすくなります。画角内に目立つ恒星がある場合は衛星が来る前に恒星を手がかりにカメラの向きをきちんと設定しておくことができます。次の例のように北極星が中心にいる場合は安心して構図の事前設定ができますが、そこから外れている場合は日周運動で恒星が動くことに注意が必要です。


Stellariumで人工衛星の軌道が表示できると、太陽や月と人工衛星が重なる位置や時刻が予報できるようになります。例えば2023-07-21夕方の西空に月がありその上をStarlink衛星群が通過することがわかりました。倉敷市からはそのような位置関係ですが、300km弱の高さで飛んでいるStarlink衛星は観測場所を東に移動すれば相対的に見かけの高さが低くなり月と重なるかもしれないことが直感的に予想できます。実際Stellariumの観測地設定で経度、緯度、時刻を微調整すると軌道が月と重なる場所が赤磐市辺りにあることがわかりました。重なるという条件だけなら観測地候補は直線上に分布し幅があるのですが仕事が終わって駆けつけられるには高速のIC近く、民家から離れていて車が停められて機材を設置できそうな場所となるとかなり限られます。GoogeleMapで探すとこのときは格好の場所が見つかりました。


観測場所による見え方の違いを比較動画にしてみました。



決定した観測場所の正確な座標をStellariumに設定し月面通過の状況を事前に確認します。



実際に赤磐市に赴いて望遠鏡で撮影した動画です。軌跡がわかりやすいよう衛星の軌道を残す処理をしています。水平方法の短い線分は動画のフレームの位置合わせによってセンサーのノイズ(ホットスポット)が移動したように見えているものです。詳細はYoutube動画の概要欄に書いておきました。

ICESAT-2の照射するレーザー光を見る方法

2023-11-07追記 
Starlink以外にも観察対象として興味深い人工衛星があります。
この話題については別の投稿に移動しました。


Stellariumに彗星や小惑星の軌道要素を読み込む方法

人工衛星のついでに小惑星や彗星などの太陽系天体の表示方法も書いておきます。
ちょうど今月8/12-13に西村栄男氏によって発見されたばかりの彗星「C/2023 P1」を表示する準備をしてみます。(小惑星についても手順は同様です。)

「スパナ」アイコン
「環境設定」ウインドウ
「プラグイン」ボタン
「太陽系エディター」
「設定」ボタン
「太陽系小天体」
「太陽系天体」タブ
「MPCフォーマットで軌道要素を取得」ボタン
「データを取得」ウインドウ
「オンライン検索」タブ
 フィールドに「C/2023 P1」と手入力し「ルーペ」ボタン
「データ取得」ウインドウ
 □ C/2023 P1 (Nishimura)と表示されているはずなので□にチェックを付け
「天体の追加」ボタン

以上で検索アイコンから「C/2023 P1」を探して表示できるようになります。




軌道要素がセットされれば天文計算ウインドウ[F10]の「天体暦」で日々の位置の推移を描画することもできます。彗星の場合は尾の向きも表示されます。



2023-08-27早朝、D=107mmF6屈折+ASI533MCProで撮影してみました。

2023-09-07早朝、D=107mmF6屈折+ASI1600MMPro+赤フィルタによる撮影

尾が螺旋状の構造をしているように見えます。彗星核が自転しつつダストを放出していることが伺えます。


2024年5月 アストロスケール社のデブリ除去実証衛星ADRAS-J

https://astroscale.com/ja/astroscales-adras-j-mission-starts-rendezvous-operations/
がターゲットに超接近中との告知があったので確認してみました。

 
実際にADRAS-Jから撮影されたデブリ「H-2A R/B」

H2ロケットは何度も打ち上げられているのでR/Bは複数のものがまだ周回しています。そのなかで今回のターゲットとなるのは33500のようです。
Stellariumで衛星URLに以下をセットすると表示できます。

H-2A R/B (Rocket Body)
https://celestrak.org/NORAD/elements/gp.php?CATNR=33500

ADRAS-J
https://celestrak.org/NORAD/elements/gp.php?CATNR=58992

ちょうど観測しやすい位置を連日可視通過するようで、特に5/2には網状星雲の前を通ることが分かったので中心位置を定めて撮影してみました。




当然動画では網状星雲は写らないので通過後静止画6s x60で背景を撮影し動画と合成しました。


2024-05-02 03:48:22 JST Borg107FL 650mm α7SIII 動画モード120fps->30fps (4X Slow)
CelestrakのSOCRATES plusシステム
を使うと2つの人工衛星の接近状況を調べることができます。このときは最接近後離れていってしまうようでした。もちろんADRAS-Jがスラスターを吹くなどして軌道を変更すればこの限りではありません。



2024年6月 月の軌道の内側まで地球に接近した小惑星「2024MK」

彗星と同様、小惑星もオンラインで検索、追加して表示することができます。

手順は彗星のときと全く同じです。

「スパナ」アイコン
「環境設定」ウインドウ
「プラグイン」ボタン
「太陽系エディター」
「設定」ボタン
「太陽系小天体」
「太陽系天体」タブ
「MPCフォーマットで軌道要素を取得」ボタン
「データを取得」ウインドウ
「オンライン検索」タブ
 フィールドに「2024MK」と手入力し「ルーペ」ボタン
「データ取得」ウインドウ
 □ 2024 MKと表示されているはずなので□にチェックを付け
「天体の追加」ボタン

以上で検索アイコンから「2024 MK」を探して表示できるようになります。最接近する2024-06-29の軌道を表示してみると23:30頃にはアルタイルの南にいて長時間撮影しやすいことがわかったので準備していたのですが天候が悪く撮影はできませんでした。



「Heavens-Above」でスターリンクの予報を確認する

Stellarium以外にも簡便に人工衛星の可視通過予報を確認する方法があります。
人工衛星の予報サイト 「Heavens-Above」https://heavens-above.com
を利用すれば打ち上げごとのスターリンク衛星の可視通過予報を確認できます。

まず最初にご自分の観測場所の設定を行います。
地図で示しても良いし、市町村名を入力し検索を押すと役所所在地がセットされます。
新規登録や変更の際は画面最下部の「更新」ボタンを押すことをお忘れなく。

設定が反映されると画面右上に地名が表示されます。



このときホームに戻るとこのサイトのURLは以下のように観測場所の緯度経度を含んだアドレスになっていることがわかります。


https://www.heavens-above.com/?lat=34.5851&lng=133.772&loc=%e5%80%89%e6%95%b7%e5%b8%82&alt=0&tz=JapST

これをそのままブックマークしておけば次からは自分の観測場所がセットされた状態からスタートできて便利です。よく使う場所が複数ある場合も複数のブックマークで観測場所を使い分けることができます。


スターリンク衛星については打ち上げのグループを選んで予報を表示することができます。可視通過が見つからない場合は検索期間を先に進めてみれば見つかる場合もあります。ただし、軌道要素は変動するのであまり先まで進めても正しい予報にはなりません。
可視通過がある場合下のように一覧で表示されます。青い時刻表示がリンクになっており、クリックすると天球上の経路が表示されます。明るさはあくまでも目安です。あまり当てにしないほうが良いでしょう。

画面右上にあるメニューの地上軌跡を押すとどのあたりを飛行するかが地図上で表示されます。90分で地球を一周するほど高速で飛行しているので地上から見る場合3分ほどで上空を飛び去ってしまうことがわかります。
HeavensAboveは便利なサイトですが、衛星の情報を表示できるのは一度に1機のみです。Starlinkのようにグループでまとまって移動する際の衛星同士の集まり具合を確認したりすることはできません。天球上の経路は描かれますが時間によって移動速度が変わる様子もわかりません。それに対してStellariumにURLをセットしておけば等倍速再生で星座の中を移動する様子もシミュレートすることができます。可視通過の候補を探すにはHeavensAboveが圧倒的に便利なので、こちらで候補を探し、見つかった通過についてStellariumで詳細を確認描画するというふうに両者を併用するのがよいでしょう。

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